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アームチェアHIROSHIMAを作ったマルニ木工とは?

アメリカのアップル社の社屋「Apple Park」(アメリカ・カリフォルニア州)には日本の木工会社が制作した椅子が数千脚並んでいます。木目の美しいシンプルな椅子で、左右の肘置きから背もたれにかけては滑らかな曲線を描き、平面は1つも存在しない優美なデザインになっています。この椅子を制作したのが広島に本社を置くマルニ木工です。デザインにこだわりを持つアップルも魅了した椅子を生み出したマルニ木工とはどのような会社なのでしょうか。

マルニ木工の歴史

1928年マルニ木工の前身である「昭和曲木工場」が広島で誕生します。創業者である山中武夫氏は、広島県の宮島で木を用いた伝統工芸が、まるで手品のように自在に形を変えていく「木の不思議さ」に魅了されました。そして、当時としては技術難度の高い「木材の曲げ技術」を確立したのです。

それまで手工業の域を出なかった日本の家具工業に対して、「工芸の工業化」をモットーに「職人の手によらない分業による家具の工業生産」を目指しました。 戦後、木材の人工乾燥技術の研究開発を始め、高度な木工加工表現のため新技術を開発導入。「技術のマルニ」と評される礎を築きます。一品生産の高級品だった彫刻入り家具の工業化に成功し、1968年に開発した「ベルサイユ」は日本の洋家具史上最大のヒットとして今も知られ、日本の代表的ブランドになると同時に、伝統的な美しさを生み出す良質な家具メーカーとして成長します。

しかし1990年代以降、「美しい家具を」という思いが風化してしまいかねない時代に危機感を抱きます。そこで国際的なデザイン感覚と日本独自の木に対する美意識、そして精緻なモノづくりの技を融合したマルニ木工にしか生みえない、日本から世界へ発信する家具造りをスタート。使い手の生活に溶け込み、100年後も定番として愛される家具を目指し今日も木と向き合い、モノづくりを進めています。

アームチェア「HIROSHIMA」と「MARUNI COLLECTION」

「マルニ木工が作るべきものとは何か」、「原点とは何かを探るため」、開発パートナーに世界的なプロダクトデザイナーの深澤直人氏を迎え、2008年から発表しているのが、「HIROSHIMA」シリーズです。目指したものは100年使っても飽きのこないデザインと堅牢さを兼ね備えた家具。そうして毎年マルニ木工から世界に向けて発表する作品を「MARUNI COLLECTION」と呼び、深澤氏はその中でもコアとなるデザインを想像すべく取り組み、「HIROSHIMA」を生み出しました。

深澤氏は「今まで世界の定番になってきた木の椅子には、デザインというよりは工芸的な手作りの温もりがあります。人間的な温もりがありながら、精緻で清浄なイメージがこのコレクションで目指すものです」と語っています。
良質なスタンダードを生み出すためには、かたちと共に、座り心地の良さ、強固な構造と扱いやすい軽さの両立、木の良さを生かした繊細な仕上げなど、木の家具づくりを熟知した技術者が求められます。

「デザイナーの要望が100%通ってしまうのではなく、そこに技術者の経験に基づく知識やアイディアなど押し返しがあって、はじめて練り上げられた製品になる。」マルニ木工ではこうした考えを共有し、まさに共創によって作品を生みだしているそうです。

なかでも「HIROSHIMA」シリーズは、木に対する日本的な美意識やそれを生活文化の中で生かしてきた技術を反映させ、無塗装に近い自然な木肌の仕上げを用いています。
2009年のミラノサローネで展示した「HIROSHIMA」シリーズには多くの注目が集めました。現在では、イギリス、ドイツ、フランス、カナダ、アメリカを始め、世界27か国以上で展開されるコレクションに成長しています。

世界的なデザイン感覚と日本独自の木に対する美意識、そして精緻なモノ造りの技が融合したこのプロダクトは、マルニ木工にしか生み得ない「日本から世界へ発信する家具」であり、匠の技が生んだ美しさの結晶と言えるでしょう。