豆知識

垂直ダムの絶壁をヤギが登る アイベックスの能力とは

アルプスアイベックスという動物をご存知ですか?
ヨーロッパアルプスの標高の高い山岳地帯に生息する大型の山羊のような草食動物です。
アルプスアイベックスは、垂直に近い断崖絶壁を登る能力によって世界的に有名になりました。

どうして断崖絶壁を登るのか?どのようにして登るのか?
アルプスアイベックスについてご紹介します。

アルプスアイベックスとは?

アルプスアイベックスはアルプス山脈の標高500m以上の山岳地帯に生息するヤギの一種です。
巨大で後ろに反り返る立派な角を持っているのが特徴です。
オスはの角は長さ1m、重さ10kgにもなります。
メスはオスよりもやや小さいですが、同じように立派な角を持っています。

鋭い蹄(ひづめ)を持ち、俊敏な動きで急な崖を登ることで肉食動物から身を守ってきました。

 

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そんなアイベックスは、ある能力によって世界的に有名になりました。

それはイタリアのピエモンテ州にあるチンギーノダムでのお話です。
このダムは、ヨーロッパにある数多くの石積みダムの一つです。
数年前にネット上で、アイベックスが垂直のダムの絶壁を登る写真が話題になり、観光客の注目を集めるようになりました。

Don Vanlerbergheさんの投稿 2020年7月1日水曜日

Don Vanlerbergheさんの投稿 2020年7月1日水曜日

アイベックスが絶壁を登る理由

アイベックスがなぜ何十メートルもある絶壁を登るのでしょうか?

その理由はなんとミネラルを補給するためなのです。
彼らの草食性の食事ではどうしても塩分が不足しています。
塩分を補給しないと骨が弱くなり、神経系や筋肉も正常に機能しません。
そのためなんとしても塩分を調達しないといけないのです。
春先になるとアイベックスが山頂から降りててきて、塩分を求めて凍結防止の塩がまかれた道路や土を舐めたりしている姿がよく見られるそうです。

ibex doesn’t give a dam…

Dad Puns and Memesさんの投稿 2020年6月5日金曜日

しかし場合によっては、必要な塩を手に入れるのは簡単にいかないこともあります。
チンギーノのようなダムの壁の高い部分にはアイベックスにとって貴重な栄養素であるカルシウムが含まれるエトリンガイトという塩分の一種が混ざっています。
それを舐めるために危険を冒して絶壁を登るのです。
チンギーノダムの他にも、ロンバルディア州のバルベリーノダムやピエモンテ州のラゴ・デッラ・ロッサダムなどでもアイベックスが絶壁を登る姿が観察されています。

Alpine Ibex scale dam in Italy

Nature loveさんの投稿 2019年10月16日水曜日

オスは絶壁を登らない?

興味深いことは、すべてのアイベックスが絶壁を登る訳ではないということです。
実は壁を登っているのはメスと若い個体のオスに限られているのです。
これまで身体の大きなオスが登っているのは観察されていないそうです。

これはおそらく彼らの思い体重(最大100キロ)と大きな角がバランスを保つことを困難にしているからと思われています。

どうやって垂直の壁を登るの?

では、アイベックスはどのように垂直の壁を登っているのでしょうか?
その秘密は彼らのひづめにありそうです。
彼らのひづめは、互いに独立して動く2本の指で構成されています。
それぞれの指は、アイベックスが曲がって非常に狭い壁の表面をつかめるように、強い外側と柔らかい内側の部分で構成されているのです。
この蹄によって、バランスを崩して滑ったとしても、途中で壁の突起をつかみ登り直せるのです。

絶滅の危機にあったアイベックス

この魅力的なアイベックスですが、一時は乱獲によって絶滅の危険に追い込まれたことがあります。
19世紀、アイベックスは食肉とその角が漢方薬として効果があるとされ、西アルプスでは100頭ほどにまで減少していました。
しかしその後の保護活動とグラン・パラディーゾ国立公園の設立により、アイベックスは復活を遂げました。
現在では、推定5万頭がアルプス山脈に生息していると考えられています。

まとめ

アイベックスが絶壁を登っている能力は生きるために必要なものだったのですね。
それにしても見事です。